ニュース | 2021年7月8日(木) 更新

6/10(木)クロージング・トークイベントレポート


2021年5月28日(金)より武蔵野館とシネマカリテにて2週間にわたり開催した【新宿東口映画祭】。6月10日(木)のクロージング作品は、無声映画の弁士・楽士付上映の活弁作品『カリガリ博士』と『狂へる悪魔』を2本立てで上映致しました。

上映後には、映画祭のフィナーレを飾る、クロージング・トークイベントが行われ、活動弁士の文化を継承する澤登翠さん、映画の未来を担うお一人である中野量太監督、MCにアナウンサーの中でも映画通と知られる笠井信輔さんをお招きし、映画や映画館にまつわる思い出や、これからの『映画』について語っていただきました!盛りだくさんのトークの一部をご紹介いたします。

「間違いなく映画館でしか味わえない体験というのが絶対にあるんです。だから、それを伝えることは、絶対に続けていこうというスタイルですね」

MCの笠井さんより「監督は、これからの映画界、自分の向き合っている映画で、こういうことをやっていきたいとか、こういうふうになっていくと良いなと思うことって、ありますか」と聞かれた中野監督は、「やっぱりここ1、2年は、作り手として悩むことが沢山あって、コロナ禍で映画館にみんなが来られない…でも今は、配信というものがあるから、そっちで楽しむことも出来るようになって、じゃあ、そこまでして映画館に行く必要があるのかと思っている人が増えてしまったのではないかなという心配があります。1回でも映画館のスクリーンで観て本当に心から感動したっていう体験があれば、いつでも帰ってこられると思うんですけど、まだその体験をしたことがない若い方々などが、このまま配信だけでいいやと思ってしまうと、作り手の僕らとしては、苦しいところがありますね。
僕は、基本的に各世代の皆様に観てもらえるような映画を撮りたいんです。もちろん、映画館だからこそっていう作品を作っていかなくてはならないという思いもあるし、配信の可能性も感じているので、配信でも挑戦することは、あるだろうし…ですので、今は本当に考えている時です。でも、間違いなく映画館でしか味わえない体験というのが絶対にあるんです。だから、それを伝えることは、絶対に続けていこうというスタイルですね」と明かしました。

「予告編て本当によく出来ているから、時折、本編よりも面白かったりしますから(笑)」

続けて笠井さんも「今、映画関係者は色々な局面で岐路に立っていると思います。配信のメリットを語る監督さんもいるし、一方で、劇場文化を消していいのかという方達も沢山いて。でも、僕も昨日劇場に行って思ったことは、予告編を観ると、また来たくなるんですよ。予告編て本当によく出来ているから、時折、本編よりも面白かったりしますから(笑)それぐらい魅力があるので、それを観るともう一回劇場に行きたくなるから、一回劇場に来てもらうというのは、とても大事なことですよね」と映画館について語りました。

「これは、見果てぬ夢かもしれないんですが、無声映画を作っていただけたらなって」

また、今後の活弁映画について「澤登さんは、弁士の活動をどれだけ続けていくかっていうのは、大きなテーマですよね」と聞かれた澤登さんは、「そうですね。今、弁士の数も徐々に増えていますので、そんなに悲観はしていないんですけど…これは、見果てぬ夢かもしれないんですが、無声映画を作っていただけたらなって。短くていいんですけど。1つの作品を色々な弁士が語ると全然違うじゃないですか。そういったことも面白いかなと思っています」と今後の夢を明かしました。

澤登さんの夢を聞いた笠井さんも「それ、クラウドファンディングでやってみたらいいですよ。出来ますよ!無声映画の新作を作りたくて、若者たちもいて、新作で皆の力を試したいんだ!と。若い人たちがいるんですから、面白いと思いますよ」と澤登さんに提案されました。

続けて「中野監督も今日、初めて(活弁上映を)観てビックリされたんですよね」と話を振られた中野監督は「ビックリしました。本当に弁士の違いでまったく別の映画にもなり得るわけじゃないですか。面白いなと思いました」。

加えて笠井さんは、「色々なことが出来るんじゃないかなという気がしますよ。(中野監督は活弁を)今っぽいと言っていましたし。アニメの声優さんたちが生で、スクリーンの舞台上で声をあてるアニメのイベントがあるように、我々も(スクリーンに声をあてるということに)慣れてきているんですよ。だから非常に先に明かりが見えている感じがします」と活弁映画の今後を語りました。満席の劇場の中、澤登さんは「ああ、今日は凄く勇気が出ました!ありがとうございます」と笑顔で喜びました。

「私達ファンとしては、足を運んで、劇場の灯を絶やさないということが一番ですね」

最後に笠井さんは「私達ファンとしては、足を運んで、劇場の灯を絶やさないということが一番ですね。また、この新宿東口映画祭もそうですが、古い映画を上映してくれるっていうのは貴重なことでして、あの時観た映画をもう一回スクリーンで観たら、とっても面白かったですとか。今日も満席で(チケット)売り切れ状態で、感染症対策の規制がない時であれば、もっと沢山のお客様にお越しいただけたんだろうと。ですので、また機会があったら皆様と一緒に楽しみたいと思います」とクロージング・トークイベントを前向きに締めくくりました。

                            (2021年6月10日(木)武蔵野館にて)