ニュース | 2021年6月22日(火) 更新
6/7(月)『淪落の人』トークイベントレポート
2021年5月28日(金)より2週間にわたり開催した【新宿東口映画祭】におきまして、2020年2月1日(土)より武蔵野館他にて公開し、香港映画ファンのみならず、幅広い客層に支持され、ぴあ映画初日満足度調査(2月1日ぴあ調べ)では、堂々の1位を獲得するなど、大ヒットを記録した感動作『淪落の人』のトークイベントが行われました。
香港映画に造詣の深い映画評論家の宇田川幸洋さんと久保田明さんによるトークイベントの模様をお届け致します!
監督の印象は「非常に若くてチャーミングで活発な人」
本編上映後、「『淪落の人』と香港映画についてお話をしたいと思います」とお客様から拍手をもって迎えられた宇田川幸洋さんと久保田明さん。
お客様と一緒に直前まで映画を鑑賞されていた宇田川さんは「観ながら思い出したのは、以前、大阪アジアン映画祭で上映した時のこと。オリヴァー・チャン監督(本作監督)のQ&Aの司会をやったのですが、その中でアンソニー・ウォン(本作主演)が、役柄上は口の悪い男で汚い言葉を使っているんだけど、それをどんどんどんどん盛ってしまい、これじゃあ成人映画になってしまう(言葉が汚いと香港ではそうなってしまう)から、客層が限られちゃうから止めてくれと言って止めてもらったと話していました」と笑いながらコメント。
当時お話しした監督の印象は「非常に若くてチャーミングで活発な人。監督の名前がオリヴァーという、普通は男の名前だったので、『何でオリヴァーなんですか?』と聞いたら、『チャールズ・ディケンズ(小説家)のオリヴァー・ツイストが好きなので、オリヴァーという名前をつけたんです』と仰っていました」と明かしました。
「役柄も車椅子に乗った偏屈で孤独な男というチャレンジングなものだったので出演を決めた」と仰っていました。
アンソニー・ウォンについて久保田さんは「もう1年以上前になりますが、この映画のプロモーションで来日したアンソニー・ウォンにインタビューしまして、その時、出演理由について、『季節がめぐり変わって、その間に立場も国籍も違う2人の距離が縮まっていく、というのも気に入ったし、役柄も車椅子に乗った偏屈で孤独な男というチャレンジングなものだったので出演を決めた』と仰っていました。
そして『この映画はインディペンデントの作品なので、出演料なしで出演をした。』『僕がこうして日本に来てるのも、一生懸命プロモーションをして、少しでも多くの方に知ってもらうために頑張っているんだ』と笑っていました」と当時のことを振り返りました。
「あの場面を観ているだけで、本当に良い映画だなぁという気がしますよね」
『淪落の人』の印象的なシーンとして久保田さんは「自転車で2人乗りをする映画はたまにあるが、車椅子に2人で乗る映画はあまり観たことがない。綿毛が飛んでいる場面がすごく良くて、あの場面を観ているだけで、本当に良い映画だなぁという気がしますよね」と感想を明かし、続けて「広東語で、香港の街並みで撮影しているのが、今は数少ないピュアな香港映画という気がしてとても良かった」と解説。
この話について、宇田川さんも「あの綿毛が舞っている場面は、アン・ホイ監督の『女人、四十。』(1995)でも出てきましたよね。アンソニー・ウォンの汚い言葉も、わからない言葉も沢山あるんですが、昔の香港映画でよく聞いた言葉で雰囲気がありますよね」と懐かしそうに語りました。
「これからも応援していきたいと思いますね」
「最近は、香港映画を観る機会が少なくなったが、香港映画には色々な楽しみを貰ったし、これからも応援していきたいと思いますね」と久保田さん。宇田川さんも「今回の新宿東口映画祭では、劇場公開前の作品を含む香港映画が多くあり、すごく嬉しい」と喜びを明かしました。
本作のトーク以外にも、香港の映画館について「昔の夏の香港の映画館は、冷房が強すぎて、凍死するかと思うぐらい。なんであんなに強くするのか」と、場内で笑いが起こる場面もあり、あっという間のトークイベントは、終始和やかな雰囲気で幕を閉じました。
(2021年6月7日(月)武蔵野館にて)